従来より、マンションの売買価格と相続税評価額とに大きな価額の乖離があり、その乖離を利用した、いわゆる「タワマン節税」が行われており、マンションの相続税評価額が鑑定価格等による時価で評価し直し課税処分を受けるケースや、課税の基本原則でもある納税者間の「公平」の観点からも問題が指摘されていました。さらに、令和4年の最高裁判決(国側勝訴)以降、評価額の乖離に対する批判が高まり、取引の手控えなど市場への影響も懸念され、早期に評価を見直す必要が出ていました。
このため、乖離の実態把握とその要因分析を的確に行い、計3回の有識者会議等を得て、国税庁が令和5年9月に「居住用の区分所有財産(いわゆる分譲マンション)の評価」についての通達を公表し、令和6年1月1日以後に相続、遺贈、贈与により取得した居住用マンションの評価について、変更が行われます。
今回の変更では、投資や節税目的でタワーマンションを保有する人だけでなく、一般的なマンションに居住している人にも影響がありますので、その概要をお知らせ致します。
一般的に一戸建て住宅の相続税評価額については、建物は、固定資産税評価額(実際の取引価額の約5~7割程度の評価)であり、土地は、路線価額(実際の取引価額の約8割の評価)となっています。従って、戸建ての土地及び建物は全体で、取引価額の約6割~7割で評価されます。
マンションの一室についての相続税評価額も同様の考え方ですが、高層のタワーマンションなどの取引価額は、建物については所在階による付加価値等が考慮されており、土地については高層マンションほど土地の面積(マンション一室に対する敷地所有権)は、細分化され極めて狭小のため、立地条件などが良い場所でも相続税評価には反映されず、大幅に評価が下がり、実際の取引価額の2~4割程度での評価になることもありました。
そこで、今回の変更は、マンション(居住用の区分所有財産)の相続税評価を主に戸建て住宅同様の市場取引価額(市場価格理論値)の約6割に補正しようとするものです。この評価方法で全体のマンションの約8割程度に影響がでる(評価が上がる)と言われています。特に築年数が浅く、高層階で、敷地利用権(土地)の面積が小さい物件ほど、今後は評価額が上がると考えられます。
細かい計算方法は複雑ですので解説は省略致しますが、分譲マンションを所有している方は、この改正による影響を踏まえて、今後の相続税の納税、遺産分割等を検討する必要があると言えます。
本通達では、区分所有建物のうち、一室の専有部分について、構造上主に居住の用途に供するもの(登記簿上の種類に「居宅」を含むもの)を対象としており、低層の集合住宅や二世帯住宅、事業用のテナント、一棟所有の賃貸マンションなどは対象外となっています。具体的にこの評価の対象から外れるマンションは、以下の通りです。
- 2階建以下の区分所有建物
- 3階建以上の区分所有建物であって、居住用の区分所有登記の数が3以下であり、その全てに所有者又はその親族が居住しているもの 等
詳しい通達の内容は、以下をご参照ください。